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トップを走り続けるには理由がある。世界を制した「ニッポンの中小企業」

コジマ技研工業とは? ~国内シェア95%の、串刺機のパイオニア
南米にも輸出される万能自動串刺機焼き鳥や串カツ、コンビニのおでん──誰もが一度は、コジマ技研の自動串刺機でつくられた"串モノ"のお世話になったことがあるのではないだろうか。自動串刺機とは、その名の通り、食材に串を打つための機械。同社は世界で唯一の専門メーカーだ。国内シェアは95%。アメリカ、カナダ、フランス、スペイン、アルゼンチンなど、海外からも次々と引き合いが舞い込むという。
代表取締役社長 小嶋 實氏創業者である小嶋 實氏は、ベアリングメーカー勤務を経て33歳で独立。産業用機械の省力化を手がける会社を立ち上げたものの、事業が軌道に乗った矢先に共同経営者に資金を持ち逃げされて倒産。失意の中で自動串刺機の開発に取り組み、世界で唯一の自動串刺機専業メーカーに育て上げた。信条は「創意・工夫・正直」。生涯「モノづくり職人」を貫き、77歳になる今も製図版に向う。

開発テーマは「使う人に優しい機械」。
徹底した顧客志向で競合を引き離す
「堅い豚のタンに串を刺せる機械を作れないか」。馴染みの居酒屋の主人が「機械屋ならできるだろう」と相談してきたことが、自動串刺機の開発のきっかけだ。軽い気持ちで引き受けて開発した1号機が好評を博し、1985年にコジマ技研工業を設立。以来25年、今や国内シェアの95%を占めるまでになった。
成長の秘けつは、「他社のマネをしなかったことにある」と小嶋社長はいう。「串刺機で起業するつもりで始めていたら、まずは先行メーカーを研究して、もしかしたら製品を模倣していたかもしれない。でも、私は競合がいることすら知らなかったんです。だから、他社とは違う発想で開発できた。これが幸いしました」
創業当時、国内には実は17、18社の競合がいたが、粗悪品ばかりで焼き鳥業界からは不満が噴出していた。焼き鳥は、串が肉の中心に刺されていなければ不良品。競合の串刺機は不良品率が6割を超え、手で刺し直さなければならなかったのだ。「だから、営業に行っても『串刺機です』というだけで門前払い。先行メーカーがいたことも、評判が悪いことも初めて知って、『これはえらい事業を始めてしまったな』と(笑)。悪評を払拭するのに、20年近くかかりました」
顧客に支持されるために、小嶋社長が取った方法はシンプルだ。それは、徹底して相手を知り、相手に合わせた串刺機をつくること。相手とは、1つは"食材"。もう1つは"串刺機を使う人"だ。1号機を開発した当時は、早朝5時から肉屋に通って肉の切り方から勉強し、居酒屋の主人が串を刺す手の動きを研究。食材ごとにトレーの形状を変える方法を思いつき、焼き鳥用、イカのゲソ用など、これまでに開発したトレーは1000種類を超える。
そして、機械の納品には「現場を知るチャンス」と、小嶋社長も必ず同行。"串刺機を使う人"、つまり加工場で働くパートスタッフとの何気ない会話から開発のヒントを拾って、コツコツと改良を加えていった。「機械のランプが多いのが信号みたいで嫌だとか、部品のネジが食材に混入しないようトレーの取り外しに気をつかうとか、どんなご意見もありがたく頂戴しました」。
機械のランプを減らし(つまりはボタンも減らし)、トレーはマグネットで装着。ワンタッチで着脱できるようにした。「今では、当社の串刺機は"メンテナンスフリー"。機械ですから故障することはありますが、パートさんでも簡単に直せる構造にしてあるんです。当社から修理スタッフを派遣することがありませんので、海外でも機械が一人歩きしています(笑)」

製品の価格は、1円たりとも値引かない。
毎年新製品を開発し、性能で勝負する
地道な改良を続けて競合を次々と退けてきた同社に、ある日、思わぬ危機が訪れる。串刺機の生産を委託していた会社が、小嶋社長の図面を競合数社に売り渡してしまったのだ。登場したコピー品は、「コジマ技研の銘板がないだけで、当社の自動串刺機そのものだった」という。
「ならば、より高性能の製品をつくろう」と、小嶋社長が改良を重ねると、図面通りのものしかつくれない競合は、値引き攻勢をかけてきた。「当社が400万円に設定すれば、向こうは460万円をつけて『2割値引きます』とかね。取引先からは『コジマさんもまけてくれ』と、ずいぶん交渉されました。でも、私は1円たりとも値引かなかった。もちろん、1台でも多く売りたいですから、辛かったですよ。でも、私の信条の1つは『正直』。値引く分を計算に入れて値段をつけるなんていうことはできません。その代わり、『コジマの機械は違う』といわれるものをつくろうと、毎年、マイナーチェンジを続けたんです」
この経験から、生産の委託はパーツごとに6社にわけ、ノウハウが盗まれないように対策。やがて競合各社は、自らが始めた値引き合戦で体力を消耗して次々と倒産し、2003年に最後の1社が廃業。コジマ技研はオンリーワンの自動串刺機メーカーになった。
この顛末を、「楽をしようとする人や、"心"がない仕事をする人はダメになる」と、小嶋社長は振り返る。「製品を改良し続けるのは、面倒なこと。他人の図面をマネしたり、値引きで何とかしようとするほうが楽ですね。でも、そういう仕事には"心"がない。私は、使う人に優しい機械をつくりたいと思って、ずっとやってきました。どんなときも相手のことを考えた仕事をする。これは大事なことだと思います」

若い社員に教えるのは"生き様"。
すべての行いは、いつか自分に戻ってくる
コジマ技研の社員は4人。採用活動は一度もしたことがなく、人づてやマスコミの報道などで小嶋社長の"生き様"を知り、「社長の下で働きたい」と集まってきた社員ばかりだという。「手取り足取り教えることはしない」という小嶋社長が若い社員に伝えるのは、その"生き様"。"創意・工夫・正直"という社是が表すのも、人としてのあり方だ。
小嶋社長が特にこだわるのは、「『正直』に生きる」こと。この思いには、33歳で独立してからの苦難の道のりで得た、強い確信が込められている。最初に立ち上げた会社で共同経営者に裏切られたときには、当時の金額で2800万円の債務を1人で完済。コジマ技研を設立してからも、販売を委託した会社に売り上げをごまかされて3000万円の借金を背負ったが、これも1人で完済。信頼していた仲間の会社には図面を盗まれ、その度に「人間不信に陥った」という数々のトラブルを、"創意・工夫・正直"の精神で乗り越えてきた。
「今にして思えば、そういった会社にも感謝しなくてはけないですね。例えば図面をマネされなければ、当社も旧態依然とした製品をつくり続けていたかもしれない。これまでのいろいろなことがあったからこそ、今があるのだろうと思うんですね。うちの連中にもいうんです。『過去の結果が現在であり、現在は未来の担保だよ』と。それを心に銘じて、共有しています」
社員は皆、そんな小嶋社長を慕い、会社設立以来退職者はゼロ。社員数が少ないのだから当然だと思う向きもあるかもしれないが、小さな会社ほど良好な人間関係を保つのは難しいもの。定着率100%は、驚くべき数字である。
事業も人生も、良いときもあれば悪いときもある。好調にもおごらず、不運の中でも希望を失わず、大切にする信条にどこまで忠実に現実と向き合えるか。そこに、コジマ技研の強さの秘けつがあるのではないだろうか。
コラム 小嶋社長の、シゴトの秘策
Q アイデアはどうやって発想する?
私のアイデアは、どれも既存技術の応用。解決したい課題がいつも頭にあり、何か応用できないかと常に考える中で発想が浮かびます。
Q 困難を乗り越える秘けつは?
一度はどん底を経験すること。「あのときに比べれば何でもない」と思えるような経験がある人は、強いですよ。
Q 企業の若手リーダーにメッセージを。
最後に頼れるのは自分。会社の信用ではなく、自分への信用で付きあってもらえるよう、いつも正直に、実力と実績を積んでください。
会社情報
- 社名
- コジマ技研工業(有)
- 所在地
- 神奈川県相模原市中央5-3-14
- 電話
- 042-755-7300
- URL
- http://www.kojimagiken.co.jp/
- 事業内容
- 万能型自動串刺機および自動供給取出装置等周辺機器の開発・設計・製作・販売
- 設立
- 1985年4月1日
- 資本金
- 1000万円
- 従業員数
- 4名
取材・文・撮影/大崎直美
(掲載日:2010年01月18日)


















